2005年06月25日

綿井健陽 “Little Birds -イラク戦火の家族たち-” [日本'05] K's cinema

littlebirds0.JPG ヴィデオジャーナリストの綿井健陽は、バグダット市内へ侵攻してくる米軍の戦車を映し出しつつ、この作品の冒頭でこう呟く。「なんということだ」 彼は“日本人”という、もはや敵国人となった属性を引きずることで幾度となく罵声と蔑視を浴びながら、それでもイラクの人々の側に立ち、ひたすらにカメラを回し続けていく。
 3歳と5歳と7歳の子供を失った父親アリ・サクバンは、自宅に隠し持つAK47のまだ使っていない弾倉を見せてこう言い放つ。「この銃は、いつかアメリカ兵を撃ち抜くためにある」
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2005年06月03日

姜文 “鬼子來了” [鬼が来た! / Devils on the Doorstep, 中国'00]

devilsdoorstep.jpg 1945年旧正月前のある深夜、中国・華北の寒村。貧しい農民夫婦の家に大きな麻袋が二つ、謎の男により持ち込まれる。袋の中には後手に縛られ猿ぐつわを噛まされた日本兵とその通訳が。

 モノクロの粗い画面の仕上げが印象に際立つ。たとえば夜な夜な開かれる村人たちの合議のシーンや、クライマックスの村人たちと日本軍兵士たちが催す宴のシーンに登場する焔とその照り返しの表現などに、単なるレトロ調を狙ったのではない、
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2005年05月17日

井土紀州 “レフト・アローン” [第一部/第二部] (日本'04) アテネ・フランセ

leftalone11.JPG 冒頭、1920年モスクワ赤の広場、レーニン演説の写真が映し出される。傍らにトロツキーが写っているバージョンと、そうではないバージョンがスクリーン上で並置される。古風だ。まじめで根暗そうな若い女性によるかなり澱んだナレーション。陰鬱な感じもベタベタで悪くない。

 イントロだけでは本気か冗談かの区別が付かず多少は身構えたおかげもあり、ほとんど全編をインタビュー・対談と新聞・雑誌記事や著作からの引用で占めるこの作品も、
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2005年05月12日

テオ・アンゲロプロス “永遠と一日” (Greece+Fr+Ita'98)

angelopletday.JPG
 映画“永遠と一日”は、老人の最後の一日をテーマにした作品。ギリシアの街、テサロニキを主舞台とする。

 詩人として生きた主人公の老人は数年前に最愛の妻を亡くし、自身も不治の病に侵され最期の旅に出ることを決意するが、旅立ちの日にふとしたことからストリートチルドレンとして暮らす少年を助けることになる。30年前の娘が生まれた日、妻が残していた自身への秘かな恋文。
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2005年03月01日

ロランス・フェレイラ=バルボサ “オルド” (Fr'04) 東京日仏会館

Ordo.jpg ロランス・フェレイラ=バルボサという女性監督の作品は、まったくの初見。出演者名の列のなかに、マリー・ジョゼ・クローズ(Marie-Josée Croze)の文字を見つけたという一点が心中の決定打となり、足を運んだ。

 「アメリカのミステリー作家による同名小説を脚色し、サスペンスというジャンル物への挑戦」したというパンフの解説や、現代の都会に生きる女性たちを繊細に描いてきたという監督の来歴を併せて考えれば、このストーリーで監督が描きたかったことは容易に察しがつくとも言えるが、それにしてもこの作品で軸となる“映画女優”の抱える内面世界の貧しさはあまりに空想的というか、少々漫画的ですらある。
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2005年02月10日

メノ・メイエス “Max(アドルフの画集)” (Hungary+Can+UK'02) DVD

adluf.jpg 映画“Max(アドルフの画集)” は、架空の画商マックス・ロスマン(Max Rothman)と画学生時代のアドルフ・ヒトラーを主人公とした作品。レンタル屋の新作棚で見つけた。去年の暮れに Robert Carlyle 主演のテレビドラマ"Hitler: The Rise of Evil" (2回に分けて放送、計4時間ほど)を観ていて、「なぜにいまヒトラー?」との思いが重なり借りてみる。

 この作品、何より光っていたのは美術の手際で、舞台となる1910・20年代のミュンヘンの街角や、当時の人々の生活様式、風俗の再現に異様なほどの執着を感じた。単に画面に古色を添えるだけでなく、窓ガラスや家具類、各種の生活用具などといった室内インテリアにバウハウスなどの先進的なモードを
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2005年02月03日

森達也 “A” (日'98) VHS

A.jpg かつて北朝鮮から拉致被害者5名が帰国する直前に、メディアがまくし立てた不安。マインドコントールされた彼らが降り立つ飛行機のタラップで、人工の笑顔をひきつらせるのではないかという恐怖。
 かつてイラクで日本人外交官2名が殺されたときここぞとばかりに叫ばれた、政権与党への批判、外務省への無数の嫌疑。そこで置き去りにされた2名の「命」それ自体。徹底的に無視され続け忘れ去られたイラク人運転手1名の「死」そのもの。

 森達也のドキュメンタリー作品“A”が、上祐逮捕後のオウム真理教における広報役を担う荒木浩の
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2005年02月01日

クリス・マルケル “高みにのぼる猫” (Fr'04) 東京日仏会館

ChatPerche.jpg 2001年9月11日直後からパリの街角のそこかしこに現れ出した“笑う猫”の落書きを追いかけるドキュメンタリー、という“趣向”の映画。反WTOデモや極右の台頭、W杯におけるサッカー仏代表の惨敗、米英のイラク侵攻といったその後二年間に起こる様々な社会事象がこの作品では、“笑う猫”の図様を執拗に追いかけていく展開の背景とされ、分析されることで異化されていく。夢のあるシニカルとでもいう感じ。

 世事を映し出す場面が次々に流れていくシークエンスで使われる音楽に、イスラムのバグパイプやチベット仏教の声明(しょうみょう)が
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2005年01月15日

“In This World”(イン・ディス・ワールド, UK'02) VHS

inthisworld かつてチベット人の難民キャンプを訪れたことがある。インド・パキスタンの紛争地帯カシミールのラダック地方、インダス川の源流域にそれはあった。私がそのキャンプを訪れる機縁となったのは、その近郊のある町に近々ダライ・ラマの行幸があるという話をコルカタで耳にしたからで、コルカタからガンジスを遡る寝台列車でデリーへ向かい、数泊を要する長距離バスでヒマラヤに分け入ってようやくその町に辿り着いたのにも関わらず、結果的にはダライ・ラマの法話会には赴かず、当地で知り合った若い文化人類学の研究者の招きでそのキャンプを訪れた。

 映画“イン・ディス・ワールド”の主人公がその起点とするのはパシュトゥン人の難民キャンプで、大局的にはインダスを底辺とする谷間の反対側にあるとはいえ私が訪れたキャンプとは殆ど何の関係も無いのだけれど、この作品を観始めてしばらくのあいだ私の頭を終始離れなかったのはこのカシミールでの体験の記憶であり、展開されるストーリーに引き込まれ出したのは、作品の中盤で主人公がクルド人の集落の世話になり、イラン-トルコ国境を越えていくシーンからだった。

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posted by kushán at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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