2005年01月22日

“長島有里枝展 Candy Horror” スカイ・ザ・バスハウス

nagashima1.JPG 長島有里枝は端的にいえば、HIROMIX世代を生き残った勝ち組写真家。割に弁の立つ人だと思うのだけれど、下手をしたら弁がなければ成り立たない写真家になってしまうんじゃなかろうか。

 今回の展示では、旅先で浜辺や樹々を撮った作品と、裸体の一部分を撮った作品が交互に並んでいた。前者は一見ありふれて見えるが次第に謎めいた風貌を現してくるもので、後者は妊娠中の女性の腹(長島本人)や、左右の釣り合いに欠けた女性の乳房(乳癌の切除手術を施されたあとなのか)などが明るい光のなかにも身体や性差のもつ闇の深さを想起させる魅力を放っている。その両の性格をもつ写真群が交互に配置されることで帯びる新たな色合いは確かにあるが、
惜しいかな数が少ない。ギャラリーHPには新作約30点とあったけれど、20点あったかな。行った時期が悪かったのかもしれない。

 受付に並んでいた関連書籍のなかに、最近出版されて話題になった彼女の写真集『not six』が置いてあったのでパラパラめくった。全編を年下の夫の日常を撮った写真が占めているのだけれども、とりわけ夫の裸体及びその性器に執着していて、勃起した状態や性交後のゴムをかぶせたままの状態のそれを大きく撮ったものもある。(ただし性器本体は白くカモフラージュされている。)
 受付棚には雑誌『SWITCH』の特集も置いてあって、長島がそのなかのインタビューでのっけから「女の子の裸撮ってアートです、って結局ある種の男の人たちに買って帰って使ってもらうのがマーケットの本音でしょ」みたいなことをまくし立てていたのが目に止まる。インタビューはその後「なぜ夫を撮ったのか」みたいな話に続いていくのだけれど、この冒頭部で長島が文句を付けているのは、嬉々として自らの裸を撮りたがり撮られたがる一部の女の子たちである。けれど“結局”のところ夫君を撮った『not six』だって売り文句とは裏腹に、その赤裸々な撮りざまゆえにある種の嗜好をもった人々に使われていそうな気もするのだが。(旦那は何だか可愛げに撮られているし。)
 かつて美術史の文脈にフェミニズムを招き入れたリンダ・ノックリンが旧来のアカデミズムやモダニズムの牙城であった批評家たちを批判の矛先などしたのとは対照的に、長島はこの言い方で消費のヒエラルキーの下部へと向けて叱咤を飛ばしているようで、まぁそういうのもありかなぁ、とか思う。写真の良さとはまた別の話として。いや何でもありなんだから、もう知らない。実際。


 展示のあったバスハウスへは、所用があって大学に行ったついでに寄ってみた。ギャラリー内ではちょうどスタッフのSさんが商談をやっていたので、終わるまで上述の『SWITCH』の特集などを読みつつ待って、近況などを話し合った。会うのは金沢へ行く前以来なので半年以上ぶり。名和晃平の今後が楽しみ、だそう。そか、これぞ育てていく喜びなのだな、と暖かいストーブに手をかざしつつしみじみ思う。

 大学では現在の担当教官をお願いしている木幡和枝先生、学部時代の担当教官の佐藤道信先生などとと話し込む。美術解剖学教室の脇を通ったら机の上に小型の標本が幾つも並んでいたのを見つけ、見学させてもらう。ちょうど布施英利先生もいらしたので、やや話し込む。芸高(東京芸大付属高校:位置づけ的には音楽学部の付属ね)が理科室にあったそれらの標本を捨てるというので貰ってきた、とのこと。兎の子供の骨格がホルマリンの中で軟骨と硬骨に綺麗に色分けされている。学年末・入試の時期とあって、先生達はそれぞれに忙しそう。
 そういえばこの大学ではいまだに、ヌードデッサンで招致されるのは専ら女性のヌードモデルのみである。まるで辞書にでもそう書いてあるかのように。
 大学美術館で働く友人の女の子二人の昼休みにも遭遇、一人は来期特許庁に就職とのこと。芸大の同窓生が霞ヶ関に勤める不思議。学期末のうえ、油画の卒制・修制の締切日でもあったらしく、大学構内は稀有の賑わいを見せていた。


“長島有里枝展 Candy Horror” スカイ・ザ・バスハウス 2004年12月17日-2005年2月5日
posted by kushán at 09:47| 東京 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | 写真 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とろさんは、球の投げ方が上手いなあ。オレもストレート以外の持ち球が欲しい(もちろん皮肉ではなくて、本当にそう思う)

今年は、修論の合間を縫って色々見て回ろうかと思っているのですが、美術批評の本についても、少し見てみようかと思います(よく茂木さんが言っている、サワラギノエという人のものも、読んだことないし)


Posted by さお at 2005年01月22日 21:41
コメント感謝です。コホン。もしフィールド上で心がけていることがあるとしたら私の場合、それは“キャッチャーを見ないで投げる”ことに尽きるでしょうか。
よく監督が泣いて怒りますがそのたびに、ああ愛されてるんだなぁ、と頬を赤らめてしまいます。

椹木野衣、ですね。90年代まで踏み込んで日本の現代美術をまとめている本が他にない、という意味で彼の主著『日本・現代・美術』はお勧めできます。

美術の分野で、批評の文章として完成度が高いなと思わせる現役の書き手としては、林道郎、松浦寿夫、土屋誠一などがいます。いずれも単行本として出版された著作はまだ殆どありませんが、期待して文章を探すに値する数少ない書き手の一人です。参考までに。まぁ狭い世界なんですけどね。
Posted by とろ at 2005年01月24日 09:50
林卓行の批評が好きだったんだけど、最近書いていないのかな。
土屋氏の文章は『新潮』2月号で見かけました。
Posted by rinopo at 2005年01月24日 22:37
わう。林さんが二人並ぶのもどうかなという訳の分からない理由で省いてしまった人をドンピシャで指摘されちゃいました。(あと松井みどりさんも加えようかと思ったのだけど、肌合いが少し異なるので省きました。)
林卓行さんのミニマリスムに関する文章とか、いかにも左利きの書く文章、という感じで私もかなり好きです。
『新潮』2月号、見てみます。情報ありがとうございます。m(_ _)m
Posted by とろ at 2005年01月25日 07:41
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